人材育成

JR東海は人材こそが最大の経営資源と考えており、鉄道現場、オフィス部門を問わず、長期雇用を前提として、社員が必要な能力を備え、意欲を持って、その能力を発揮できるよう、様々な人材育成制度を設けています。

人材育成の基本方針

鉄道技術の多くは、経験の積み重ねによって築き上げられるものであり、人材育成は一朝一夕にはできないことから、「OJT(職場内教育訓練)」、「集合研修」、「自己啓発」を教育の三本柱とし、継続的に丁寧な社員教育に努めています。

教育の三本柱

OJT(職場内教育訓練)

各職場における日常の仕事を通じて、業務知識や必要な技術、仕事の進め方などを上司や先輩社員から教わることをOJT(On the Job Training)と呼びます。JR東海では、特に若手社員を対象として「N-OJT」と呼ばれる体制を整備しています。N-OJTでは若手社員一人ひとりにトレーナーを指定し、習得すべき知識・技能をリスト化した「N-OJTリスト」を用いてそれぞれの習熟状況を確実に把握する等、効果的に技術継承できる環境を整えています。また、OJTを補完する役割として、JR東海では、プロフェッショナル職の社員を対象に、先輩社員が新入社員を継続的にフォローする仕組みを設けています。たとえば、短期大学・専門学校・高校卒の社員には、職場外の先輩社員がアドバイザーとして新入社員数名のグループを担当する「アドバイザリー制度」があり、勤務時間の中で月1回グループでの会合を開き、先輩社員から仕事に対する不安や悩みにアドバイスを行い、新入社員が1日も早く仕事や生活環境の変化に慣れ、職場に定着していけるようサポートするほか、社会人・JR東海社員としての心構えや求められる行動について指導しています。
OJTは、企業内教育のなかでも最も基本となるものです。OJTを補完する役割を担うのが、後ほどご紹介する「集合研修」、「自己啓発」です。

特に鉄道に関わる業務では、ひとりで進められる仕事はほとんどありません。

チームのなかで知識・経験豊かな上司・先輩の指導を受けながら進めていきます。

集合研修

集合研修とは、職場外において集団に対して行う教育機会です。入社した社員全員が受講する「新入社員研修」をはじめ、系統・職種に応じた集合研修が体系的に用意されており、着実にステップアップすることができます。

総合研修センター

集合研修は主に、静岡県内にある当社の施設「総合研修センター」にて行います。総合研修センターには、教室や実習設備などの研修施設のほか、図書館・体育館・グラウンド・宿泊設備などを備えています。

  • 総合研修センターの外観です。

  • 研修を受講する教室です。ここで講義やグループワークを行います。

  • 実習設備です。実際の車両と同じような状態で訓練をすることができます。

新入社員研修

新入社員研修は、職種や系統ごとに、1~2カ月にわたり、基本的に月曜日から金曜日まで総合研修センターにて実施します。
研修カリキュラムには、会社に関する理解を深める講義やグループディスカッション、現業機関における実習プログラムが組み込まれており、配属後の業務の基礎となる数多くの貴重な経験を積むことができるとともに、今後のJR東海の発展を支える同期を始めとした周囲と信頼関係を築き、協力して物事を進めることの大切さを体験的に学びます。

15名ほどで1クラスが構成され、「インストラクター」と呼ばれる社員の指導のもと、社会人としてのマナー、会社知識、鉄道技術の基本などについて学んでいきます。

講義形式の座学だけでなく、グループでさまざまな課題に取り組むことも多いです。

自己啓発

自己啓発とは、自分自身を高めるための知識・技能の習得を目指して、自発的・自主的に努力するものです。
代表的なものをいくつか紹介します。

社内通信研修

鉄道事業の運営に必要な専門知識を、体系的かつ計画的に自主学習できる制度です。
受講者は、自身の関心やレベルに応じてオンラインで受講を申し込み、電子テキストでの学習を経て、合計7回の理解度確認レポートが合格水準に達するとコース修了となり、修了証が交付されます。

社外通信研修・資格取得

社外通信研修とは、業務に活きる100以上の社外の指定講座の中から各自の関心に応じて選択し、一部会社の補助を受けながら自主学習できる制度です。講座内容としては、資格取得関係、ビジネススキル、ICTスキルなど幅広いラインナップを準備しています。レポート方式の講座に加え、GLOBIS学び放題やUdemyなどのオンライン講座も拡充中です。
また、通信研修などの自己啓発を経て、指定の資格を取得した際には受験料相当額を補助しています。「経営体力の再強化」に向けて最大限活用していくこととなる、ICT関連の対象資格も順次拡大しています。

多様な人材の育成

「日本の大動脈と社会基盤の発展に貢献する」という経営理念を将来にわたって実現するためには、社内外の様々な環境変化に対応していく必要があります。そのような課題に対する人材育成の取り組みとして、意欲ある社員に知識と経験を積む、様々な機会を提供しています。

社内公募制度

意欲・能力ある社員を募ることで適材適所の登用を実現するとともに、これを契機として社員各々の自己研鑽意欲や挑戦心を喚起することを目的として、社内公募制度を設けています。本制度を通じて、職種や系統にとらわれず、多種多様な人材を様々な部門で登用しています。

ICT人材の育成

「全社員のICTリテラシー向上、およびICTをフル活用していく社内文化の醸成」を目的に、全社員を対象にオンライン学習ツールを一定期間提供することを主とした「ICT全社員教育」を2023年度よりスタートさせるなど、社員のICTリテラシーやスキルをより一層高め、新しい技術を積極的に活用していけるよう、ICT人材育成をより充実させています。
「ICT全社員教育」では、オンライン学習ツールを一定時間以上受講した社員に対してデジタルバッジを授与し、学習した成果を可視化できる仕組みを導入するとともに、自己啓発支援制度のなかに推奨するICT関連の国家資格を設けて取得を奨励することで、社員の学ぶ意欲を喚起してキャリア形成にも繋がるよう取り組んでいます。
このほか、ICTを活用した社内での取組事例の共有と取り組む社員のモチベーションアップを目的とした「ICT全社発表会」の開催や、データ分析等の実践的なスキル習得を目的とした研修を拡充するなど、今後もICT活用の進捗に合わせて、人材育成の充実を図っていきます。