時刻表じゃない。約束なんだ。
スケジュール帳に書かなくても、絶対に忘れない約束がある。
毎月第3土曜日。15:03。東京駅16 番ホーム。
単身赴任中の私に会いに、新大阪から娘がやってくる。
大切な誰かと会うとき、人は必ず時間を守る。
いや、それどころか、私は30 分も前からここにいる。
「もう、ひとりで大丈夫やって」。苦笑いされても、
じっとしていられないのが親だ。
15:03 ちょうど。ホームに、約束がやってきた。
窓の向こうに、涼しい顔した娘が見える。
当たり前であることの、誇り。
いってらっしゃい。
おかえりなさい。
さりげなくて、
かけがえのないふたつの言葉を、
私たちはつないでいる。
ただ支え続けるだけではなく、
よりよく変えていくことを常に目指しながら、
「当たり前」を進化させていく。
それこそが私たちの誇りだ。
駅づくりという、街づくり。
きっかけは駅ビルの中に、
わたしの大好きなファッションブランドが店を構えたことだった。
彼と出かけて、たっぷり時間をかけて品定めして、
ひと休みしたくなった頃。
今度は、居心地のよさそうなカフェを見つけた。
今までは通過点だった駅が、ふたりの好きなものが詰まった場所になった。
「この街もすっかりおしゃれになったよね」。
駅から始まった街の変化が、
一緒に過ごす時間をもっと豊かにしてくれる。
美しい日本を、教えてくれた。
車窓の向こうに、
雪化粧をした山脈が見える。
高校最後の卒業旅行。
一枚のポスターが、僕たちをここまで連れてきてくれた。
行き先が決まらずに焦っていた時。
いつもの駅で、ふと見かけて。
「ここすごいな!」。みんなで盛り上がった。
普段何気なく使っている線路の先には、
まだ自分が知らない美しい日本が、広がっているのかもしれない。
手のひらが、窓口になった。
飛び乗ったタクシーに「駅まで」と告げて、
遠距離恋愛中の彼へメッセージを送る。
「仕事、早めに終わった。いまから向かうね」。
そのままアプリを立ち上げて、新幹線を予約する。
急に時間ができた時。
ふと会いたくなった時。
手のひらの窓口は、その気持ちにすばやく応えてくれる。
予約完了のメールを眺めながら、
私はもう、彼との週末をどう過ごすかを考え始めている。
毎日会える、幸せ。
単身赴任中は、子どもたちの寝顔すら見ることもできなかった。
でも、リニアがそれを変えた。
「ただいま」。
ドアを開けると、風呂上がりの子どもたちが駆け出してくる。
その日あった出来事を、目を輝かせながら話してくれる。
はしゃぎっぷりに、妻がそっと釘を刺す。
「パパ、お仕事で疲れてるんだから」。けれど私は思う。
仕事に打ち込んだあとだからこそ、こういう時間が必要なんだ、と。
子どもたちの寝顔を見つめながら、毎日会える幸せを今日もかみしめる。
より速く、安全な世界を目指して。
速さと安全を、
高いレベルで両立させた日本の高速鉄道システムに、
いま、世界の注目が集まっている。
風土の違い。文化の違い。壁もきっと多い。
けれど、きっとできる。
一人ひとりの力を重ねて、
常識を塗り替えていく。
かつて日本でやりとげたことを、
はるか海の向こうでも。
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